
前回
母校の校舎の最東端にくっついてる特別教室棟には技術室、美術室、音楽室がある。
焼却炉にゴミを運びやすいようにだと思うけど特別教室棟からは階段が伸びていて、一階二階三階とそれぞれの教室から出られるようになっていた。
バカはバカなりに少しは頭を使っているらしく、夜間侵入できるようにとマサヒロは昼間のうちから二階の特別教室のドアの鍵を開けていた。
そのドアの施錠は吹奏楽部がする事になっていたので、僕は「もしここから入ったのがバレたら顧問と先輩にどやされるんだろうなー」とかそんな事を考えてたと思う。当時僕らは中学2年生だったからね。
先陣を切ったのはマサヒロだった。夜の校舎の静けさにビビりまくる僕らを尻目にずんずん突き進んで行く。頼れるのはケータイについてる写メール用のライトだけ。せっかくだから懐中電灯でも持ってくればよかったのに。
目が暗闇に慣れて、夜の校舎は大して怖くないんじゃないか、とそう思うのにそれほどの時間はかからず、ひとまず僕らは夜中の校舎を堪能する事にして本校舎の四階まで上ってみた。
岡の上に学校があるわけでもないので高層ビルに上った時に見える町並みや百万ドルの夜景のそれは味わえはしないのだけど、野球部がトンボで馴らした白線の引かれていないまっさらな校庭は良く手入れされた庭みたいできれいだった。
月明かりに照らされて出来た窓枠のラインが教室と廊下の床に新しい溝を増やし、高く生えた白樺の葉はいたずらに影の模様を作り変えていた。昼間とは空気の匂いも違うのが分かる。
校舎内に入って15分程経った頃に友人の一人タカシが異常に気がついた。
「なぁ、あの上の機械ピカピカ点滅してんのなんでよ?」
確かに何かのセンサーのような物が赤く点滅していた。
「火災報知器かなんかだろ。煙とか感知するやつ。」
「あー、でもあっちのヤツは緑色じゃん。こっちは赤じゃん。おかしくないか」
だいたい廊下の20メートル先に同じようなセンサーが取り付けてあるのは確認できた。ただそのセンサーは緑色に点滅していた。
校舎のような屋外と多く接する薄くてでかい建造物は中の空気も外の空気もダイレクトに届けてくれる。校庭の脇に生えた桜の木の葉がこすれる音も、がたがた軋む窓の音も長い廊下で反響し増幅されるので僕らの感覚が鋭敏になったかのように錯覚させられる。
何かおかしいな。皆そう思ってた。
カツカツと靴のなる音が遠くの方で聴こえたその時、僕らの真上で爆発が起きた。
目が痛い。校舎の蛍光灯が一斉に点されたのだ。

